絵本で日本語 教えてます

外国人や外国にルーツのある子どもに日本語を教えるための 教材としての絵本紹介

「こん と ごん てんてん ありなしのまき」文・織田道代 絵・早川純子

 

 

ひらがなとカタカナを教え、絵カードで単語も少し覚え始めたら読みます。
また、JSL児童でもカタカナは苦手な子が多いですし、静音がすらすら読めても濁音が苦手な生徒は非常に多いです。
そして、外国人学習者は、オノマトペが苦手です。
誰にとっての入門としてとてもすばらしい本です。もう教科書といってもいいくらい。ほんとうに、こんな本を待っていた!!!

内容は、清音が右ページ、濁音が左ページで、濁音がつくだけで内容やイメージがこんなに変わるんだということがわかります。
私が清音側を読み、子どもには濁音側を読ませます。
生徒が多い時は、半分ずつで読み合います。
「ふたがとぶ」が「ぶたがとぶ」になるページは笑い声が上がります。楽しみながら、濁音を学べる絵本です。

「せっけんとけしごむ」及川賢治

こどものにほんご3・4課/9課 

www.fukuinkan.co.jp

こどものとも 2022年1月号

 

存在文を勉強したら読みます。

存在文・・・
<場所>に<もの>があります、<もの>は<場所>にあります。
<場所>に<人・動物>がいます、<人・動物>は<場所>にいます。

こどものにほんごでは、3課ですでに指示詞も勉強済みですので、
たとえば「ぼくは ここです 机の下の…」という文章がすべて理解できます。出てくる単語も理解しやすい言葉、または既習の身の回りの言葉ばかりですので、外国語学としての日本語の授業で使用するとき、生徒自身がはじめてちゃんと読める物語文になっています。物語もわかりやすく、100%ORANGEの及川氏の絵やコマ割にも親しみがわくのか、クライマックスには「わあっ」と小さな歓声も上がります。

 

注意点としては、本来存在文は動く動物に「いる」を使うと教えるので、文中の物たちが「いる」と話しているのが混乱するかもしれません。「ある」と「いる」の授業と関係していると思わせず、「上下左右」などの位置関係と、指示詞に注視させて読ませるといいと思います。

 

JSL児童生徒は、上下左右などの言葉は理解していることが多いので、指示詞を勉強する時に読んでもいいと思います。
また、「小さくなった」「大きかった」などイ形容詞の活用や、変化の「なる」の勉強に使用しても良いと思います。

だいぶつさまのうんどうかい 苅田澄子

 

運動会のシーズンには、JSL児童生徒向けに、運動会に関する絵本を読みます。
最近は、コロナ渦の影響で、競技のほとんどを見たことがない子や覚えていない子が多いので、競技はあらかじめ別資料などで教えてから読みます。自分がやったことがある競技や、今練習している競技が絵本の中に出てくると、とてもよろこびます。

 

この本は、仏様たちの運動会に大仏様がはじめて参加する、というユーモラスな絵本。出てくる仏様たちの動きが面白く、また僧侶でもあるイラストレーターの中川学氏の絵がとてもきれいです。


子どもたちは千手観音の玉入れをずるい!と笑い、パン食い競争ならぬ"まんじゅう食い"競争の狛犬の姿を面白がります。
一度読んだ後も、裏表紙に描かれた説明着きの仏様を見たがります。

 

私が教えているのが大仏に近しい地域なので、皆たのしんで読みますが、宗教の関係には配慮し、問題がありそうなら読みません。

「オトシブミのふむふむくん」おのりえん

www.fukuinkan.co.jp

こどものとも2022年2月号

 

毎月最初の授業で読みます。
3月から始まって、3月に終わる、一年間を描いた絵本です。

 

オトシブミという虫同士の往復書簡として構成され、毎月1ページ、日本の暮らしに基づいたいろんな虫と幼虫たちの暮らしが描かれています。その姿がとてもユーモラスでたのしい絵本ですが、虫が大嫌いな子にはちょっと直視できないほど、秋山あゆ子さんが美しくリアルに描いた虫が一面にたくさん出てきます。
どこかにふみふみちゃんかふむふむくんが描かれているのでそれを探すのも楽しいようです。

 

1年間を通して少しずつ読み進めていく本は、毎月の成長が見て取れるのでいっしょに読んでいて楽しいですし、「お花見した?」とか「このまえ台風あったね」とか「まめまきしたことあるよ」とか、その季節の事柄についた会話も出来るのでおすすめです。

「うるさいぞ…」五味太郎

[文型]---

www.fukuinkan.co.jp

こどものとも年少版2022年2月


ひらがなを一通り教えたら読む絵本です。
文の意味はわからなくても、絵とこちらの動作で「作っている」などはわかりますし、わからなくても問題はありません。
「わあ わあ わあ」だけでも、読める言葉があるのはうれしいようです。
まわりをなにかが飛んでいることは誰もが経験あるようで(その煩わしさも経験済み)、なにが飛んでいるか、母語などで当てようとしてきます。しかし今のところ、誰も、飛んでいる"それ"を当てた子はいません。ラストは小さな子ほど目を丸くして驚きます。年齢が上がるとシュールさに若干引き気味の様子なので、低学年の子に向いているようです。

「かみのおと どんなおと」谷内つねお

 [文型]オノマトペ(紙)

ちいさなかがくのとも2022年10月号
紙を丸めたり折ったりやぶったりする動作の音を言葉にする、擬音語の絵本です。実際紙を用意して、自分にはどう聞こえるかを比較し、聞こえた音を書かせてもいいです。
JSL児童生徒で、山折りと谷折りがわからない子には、ここで教えてあげるのもいいです。
最後、小さくちぎった紙がばらまかれるのですが、授業でやると片付けが大変なので、生徒がやりたがっても(たいていやりたがります)そこは我慢してもらいます。本当はこれもやらせてあげたいですけどね。

「ふりかけのかぜ」ねじめ正一

[文型]て形 オノマトペ(食事)

こどものとも年少版2022年11月号


ふりかけの風が吹く季節になると、おすもうさんたちが炊飯器をかついでやってくる、という楽しい絵本。
「ふいて」「ふって」「もって」「まって」が繰り返されます。

もぐもぐ、もりもり、など、日本語学習者が苦手とするオノマトペもあります。
外国にから来た子どもは、力士の絵が大好き。格好と体格が面白いらしく、たいてい爆笑しています。
お米が主食の国の子どもで、日本に来て、「のりたま」が好きになったという子もいました。
JSL児童生徒には、日本にはいろいろ面白いふりかけがあるので、スーパーで見て来て、どんなふりかけがあったか、先生に教えてね、と宿題に出すこともあります。