絵本で日本語 教えてます

外国人や外国にルーツのある子どもに日本語を教えるための 教材としての絵本紹介

「もちどろぼうとおまわりさん」へんみあやか

副助詞「も」 日本の食べ物 もち

こどものとも年中向き2023年1月号

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冬休み明けに、たくさん絵本を持って行って、どれから読もうか、と聞いたら、この絵本を選ぶ子が多くいました。絵を見て、「おもしろそうだから」という理由でした。
ところがお餅を知る子は一人もいませんでした(中国圏の子たちも、形状を見てわからなかったようです)。
そこで、まずはお餅の説明からしなければならなかったので、動画を見せるなどして説明しました。

日本の食べ物は給食に出る場合も多いので、公立に通う子どもは食べながら覚えていくことができますが、お餅が出る学校はほとんどありません。以前は幼稚園や保育園でおもちつきをするイベントも多く、お餅を知っている子も多かったのですが、昨今は新型コロナの影響もあり、なかなかお餅つきも目にすることがないようです。

お餅がよくわからないようでも、焼かれてぷく~っとふくれる場面にみんなおかしそうに笑います。「ぷく~」という言葉も楽しいようです。
もち泥棒が走ります、おまわりさん「も」走ります、といった文構成なので、パターンがわかるくらいまで読んだ後は、泥棒の部分を先生が読み、おまわりさんの部分を生徒が読む、と振り分けて読むと、音読もスムーズに行えます。

 

「オニとワニ はるなつあきふゆ はいくえほん」文・ねじめ正一 絵・飯野和好

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こどものとも」2023年1月号。

 

日本の行事を題材とした俳句が1月のお正月から始まって12ヶ月分、見開きで展開され、日本文化の説明の導入にもぴったりです。
オニとワニ、という言葉も口にして楽しいようです(途中ででてくるウニとカニも!)。
ちょっと強面のオニとワニの絵もインパクトがあり、またそんな二人のユーモラスな様子が楽しい絵本です。

ひらがなが読めるようになったら、一人で読ませてみます。
575のリズムは読みやすく、パッと見て文字数が少ないのもわかるからか気持ちのハードルが下がるようで、他の絵本だと「先生が先に読んで」と言うような自信があまりないような子でもチャレンジします。そして、一冊を一人で読み終えることは大きな自信になります。

「シルクハットぞくはよなかのいちじにやってくる」おくはらゆめ

程度(ちょっと)

 

「1時」が理解でき、程度(大好き・好き・まあまあ好き・少し好き・好きじゃない)を勉強したら読みます。
日本の子どもは「ちょっと」をよく言いますし、こちらもよく使いますので、「少し」といっしょに「ちょっと」もJSL児童生徒には早めに教えてあげるといいかと思います。
布団をかけ直す仕草も、子どもには身近な動作なので理解できます。

「ゆめちゃんのハロウィーン」高林麻里

[行事]ハロウィン

 

 

10月、運動会も終わった頃に読みます。
ニューヨークに引っ越したゆめちゃんの、はじめて参加するハロウィーンの模様が描かれています。
準備の楽しさ、当日のみんなの仮装っぷり、いろんな人種、いろんな家、そして寝床について思い返すゆめちゃん。
サラダの仮装ってどんな!?と盛り上がったり、自分が仮装するならなにになりたいか考えたり。ハロウィンパーティーに参加したことのない子は興味津々に、参加したことのある子や、母国での思い出がある子などはその話をしてくれます。
2年生はちょうど、国語で「作り方」の書き方(材料と道具・まず・つぎに・最後に)を習う時期なので、ジャック・オー・ランタンの作り方を、物語文から作り方の文章に書き換えることをしました。
「くりぬく」が、感覚的にわかる子と、そうでない子がいるので、実際になにか粘土などをくりぬけると、もっといいかもしれません。

「はかせのふしぎなプール」中村至男

 

 

なんでも物が大きくなるプールを発明した博士と助手のやりとりが楽しい絵本。
見開き1ページに一部だけ水から出た部分が見え、次のページの見開きに、水を抜いて全貌があらわになった物があります。
子どもたちは当ててやろうと喜んで読みます。
当たるととってもうれしい模様。

 

文型としては、イ形容詞の活用「大きく」と、変化の「なる」を教えることが出来ます。「大きくなる」は、子どもたちにとってはわかりやすい文型のようですね。
て形もよく出てくるので、外国語学習者にはて形終了後に、JSL児童には「大きくなる」を教える時に使うといいと思います。

「くらべるえほん たべもの」ちかつたけお

 

左右のイラストの、なにがどう違うかをくらべる絵本。


キャベツとレタスから始まって、縦に切ったものと横に切ったもの、入っている中身がちがうたいやき、できたてと時間がたったもの…など、ただ形が似ているだけの比較ではないところがおもしろいです。
(天ぷらとフライは私もわかりませんでした!)

 

文字はとても少ないので、単語カードをやって、イ形容詞を少し学んだらもう読めます。
単語カードを机にひろげておいて、答えとなるカードを探させるのもゲーム性があって盛り上がります。

JSL児童生徒には算数の比較の入り口としても使えます。なんとなく使っている比較の言葉を整理し、意識させ、書き言葉に落とし込みます。

「怪物園」junaida

 

ハロウィンの季節になると、おばけの本をたくさん読みます。
こどもはちょっと怖い話が大好き。


この本は、junaida氏の描くうつくしくおそろしい怪物たちがたくさん出てきます。「かいぶつ」という言葉は知らなくても、「モンスター」という言葉を知っている子は多いので、すんなり世界に入れます。物語の中の、こどもの空想遊びとむすびついていくところは、少しむずかしいようですが、それよりも、怪物たちと、怪物園に心が奪われてしまうようです。


読んだあと、どの怪物がいちばん怖いかを選んだり、怪物たちがどのくらいの大きさか校舎と比べてみたり、いちばん小さい怪物を探してみたりと、子どもたちは、何度も何度もページを繰ります。

現在、東京都の立川にあるミュージアム「PLAY!」でjunaida初の美術館での展覧会「IMAGINARIUM」が開催されています。

怪物園の巨大アニメーションもあります。1月15日まで。

 

play2020.jp